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東京高等裁判所 昭和35年(く)124号 決定 1960年12月15日

少年 T(昭一八・一二・一生)

D(昭一八・一〇・二二生)

N(昭一八・六・一五生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、少年に対する保護処分取消申立を棄却した原決定には重大な事実の誤認があり、且つ決定に影響を及ぼすべき法令違反があるから、原決定を取り消し、本件を原裁判所に差し戻すとの裁判を求めるため、本件抗告に及んだというのであるが、

一件記録によると、少年は、少年に対する強姦保護事件により、昭和三五年二月二三日千葉家庭裁判所松戸支部において、中等少年院送致決定の言渡を受け、右決定は少年法第三二条本文所定の抗告期間を徒過したため確定したが、その後同年五月二三日附添人から、少年に右強姦の非行事実がなかつたことを認め得る明らかな資料、すなわち少年に対して審判権がなかつたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したとして、同法第二七条の二第一項に準拠して右保護処分取消の申立がなされたので、同年一〇月二八日原裁判所が右申立棄却決定をしたところ、これに対して、同年一一月一〇日、少年の附添人である抗告申立人から本件抗告を申し立てたことが明らかである。

しかし、保護処分をした家庭裁判所が、その決定が少年法第三二条第一項所定の抗告期間を徒過したために確定した後に、少年に非行事実がなかつたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したことを理由にして、同法第二七条の二第一項の規定に従つて、その保護処分の決定を取り消すことができるかどうかについては、その文言上多少の疑がないわけではないが、仮にできるとしても、右規定は少年、その法定代理人又は附添人に対して、保護処分取消の申立権までも認めたものとは考えられないから、附添人が千葉家庭裁判所松戸支部に対してした保護処分取消の申立は、同裁判所の職権発動を促すものに過ぎなかつたものであつて、同裁判所としては、調査の結果保護処分を取り消すべきものと判断しない以上、特に本案に対する決定をする必要がなかつたものであり、従つて、同裁判所が、決定をする必要がないのに誤まつて申立棄却の決定をしたとしても、少年、その法定代理人又は附添人がこれに対して更に抗告をなし得る理由はなく、又右決定に対して、少年、その法定代理人又は附添人が抗告をすることを是認した規定もないから、本件抗告は不適法のものとして棄却すべきものとして、主文のように決定をする。

(裁判長判事 井上文夫 判事 久永正勝 判事 河本文夫)

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